高齢者におけるプロテインの必要性とたんぱく質摂取の意義

サルコペニアとの関連性をエビデンスから検証する

今回はいつもと違い、かなり専門的視点から「高齢者とタンパク質の関連性」をレポートしています。

はじめに

高齢者にとって、たんぱく質は単なる「筋肉をつくる栄養素」ではない。加齢に伴う骨格筋量・筋力・身体機能の低下、すなわちサルコペニアを予防し、フレイルや要介護状態への進行を抑制するうえで重要な栄養素である。

一方で、「高齢者はプロテインを飲めば筋肉が増える」という単純な理解も適切ではない。近年のシステマティックレビューやメタ解析では、たんぱく質補給単独の効果は限定的であり、十分なエネルギー摂取とレジスタンス運動を組み合わせた場合に、筋量・筋力への有益性がより明確になることが示されている。

したがって、高齢者におけるプロテインの位置づけは「誰もが必ず飲むべきもの」ではなく、食事だけでは必要量を確保しにくい人が、適切なたんぱく質摂取量を確保するための補助手段と捉えるのが科学的に妥当である。


1.なぜ高齢者にたんぱく質が必要なのか

加齢に伴って骨格筋量は徐々に減少する。厚生労働省の「e-ヘルスネット」でも、骨格筋量の低下は25~30歳頃から始まり、生涯を通じて進行すると説明されている。さらに活動量の低下、疾患、栄養不足などが加わることで、筋力や身体機能の低下が加速する。(健康日本21アクション支援システム)

この状態が臨床的に問題となったものがサルコペニアである。

EWGSOP2(European Working Group on Sarcopenia in Older People 2)は、サルコペニアを単なる「筋肉量の減少」ではなく、筋力低下を中心とした筋疾患として位置づけている。具体的には、

  • 筋力低下
  • 筋肉量または筋肉の質の低下
  • 身体機能低下

を段階的に評価し、筋力低下がサルコペニアを疑う主要な指標とされている。(OUP Academic)

つまり、高齢者の栄養管理で重要なのは「体重を維持すること」だけではなく、筋肉を含む除脂肪量と、それを実際に使う能力を維持することである。


2.高齢者では「若年者と同じ量」で十分とは限らない

一般成人のたんぱく質摂取については、従来0.8 g/kg体重/日という基準が広く用いられてきた。しかし、高齢者では加齢によって筋たんぱく質の合成反応が低下する「アナボリック・レジスタンス」が生じるため、若年者と同じ摂取量では筋肉の維持に十分でない可能性が指摘されている。

PROT-AGE Study Groupは、高齢者では、

1.0~1.2 g/kg体重/日以上

を健康維持のための目安とし、急性・慢性疾患、低栄養リスクなどがある場合には、

1.2~1.5 g/kg体重/日

を推奨している。重度の疾患や外傷などではさらに高い摂取量が必要になる場合がある。(サイエンスダイレクト)

ESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)の高齢者栄養ガイドラインも、高齢者では少なくとも1.0 g/kg体重/日を確保することを推奨し、健康な高齢者では1.0~1.2 g/kg体重/日、疾患や低栄養リスクがある場合には1.2~1.5 g/kg体重/日程度を示している。(Clinical Nutrition Journal)

日本でも、日本サルコペニア・フレイル学会の「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」は、適切な栄養摂取、とくに適正体重1 kg当たり1.0 g以上/日のたんぱく質摂取について、サルコペニア発症予防に有効である可能性があり、推奨するとしている。ただしエビデンスレベルは「低」とされている点には注意が必要である。(日本アニメーション映画祭)


3.具体的にどのくらい必要なのか

例えば体重60 kgの高齢者を考えると、

状態たんぱく質摂取量の目安
0.8 g/kg/日48 g/日
1.0 g/kg/日60 g/日
1.2 g/kg/日72 g/日
1.5 g/kg/日90 g/日

となる。

したがって、健康な60 kgの高齢者であれば、1日60~72 g程度が一つの実践的な目安となる。

ただし、これは「プロテインを60~72 g飲む」という意味ではない。肉、魚、卵、乳製品、大豆・大豆製品など、食事に含まれるたんぱく質をすべて合計した量である。

例えば、

  • 朝食:卵、牛乳、ヨーグルト
  • 昼食:魚や肉、大豆製品
  • 夕食:肉・魚・豆腐など

という形で必要量を確保できているなら、プロテインサプリメントを追加する必然性は低い。


実際問題として高齢になればなるほど必要量を食事からコンスタントに摂取するってキツいんですよ。

4.プロテインを飲めば筋肉は増えるのか

ここが最も重要な論点である。

結論からいえば、「プロテインを飲むこと」そのものが高齢者の筋肉量や身体機能を大幅に改善するとは言えない。

高齢者を対象とした研究では、たんぱく質補給単独の効果には一貫性がない。

2019年に報告されたシステマティックレビュー・メタ解析では、65歳以上のフレイルまたはプレフレイル高齢者を対象とした8研究、503人を解析した結果、たんぱく質補給によって除脂肪量、握力、下肢筋力、SPPB、歩行速度などに統計学的に有意な改善は認められなかった。(PubMed)

さらに、主として健康な高齢者を対象とした個人データメタ解析でも、運動などを伴わないたんぱく質・アミノ酸補給だけでは、除脂肪量や筋力を有意に増加させる証拠は得られていない。(PubMed Central (PMC))

このことから、

「プロテイン=筋肉増強剤」ではない

と理解することが重要である。

プロテインの本質は、あくまで「たんぱく質を補給する食品」である。


5.では、運動と組み合わせるとどうなるのか

たんぱく質の効果を考えるうえで、レジスタンス運動との組み合わせは極めて重要である。

2019年のシステマティックレビュー・メタ解析では、高齢者を対象とした21件のランダム化比較試験、計1,249人を解析した。

レジスタンス運動にたんぱく質補給を組み合わせることで、運動単独と比較して、

  • 除脂肪量:+0.23 kg
  • 四肢骨格筋量:+0.39 kg
  • 握力:+0.29 kg
  • 膝伸展筋力:+0.27 kg
  • レッグプレス筋力:+0.33 kg

という有意な改善が認められた。一方、身体機能については有意な改善が認められなかった。(PubMed)

つまり、たんぱく質補給には一定の上乗せ効果が期待できるものの、筋力や身体機能を改善するための中心的介入は運動であり、プロテインだけで代替できるわけではない

筋肉は運動以外では育たない⇒肥料が必要⇒タンパク質を摂る⇒プロテインが補助として良い?!


6.2024年のメタ解析から見た「プロテイン+運動」

より新しい研究でも、この傾向は支持されている。

2024年のメタ解析では、地域在住のサルコペニア高齢者を対象とした7件のRCTと1件の準実験研究、計854人を解析した。

たんぱく質補給とレジスタンス運動を組み合わせた介入では、

筋肉量:SMD 0.95(95%CI 0.13~1.78)

筋力:SMD 0.32(95%CI 0.08~0.56)

と、いずれも有意な改善が認められた。研究期間は10~24週間であった。もっとも、研究数が限られているため、著者らも結論の確実性には限界があるとしている。(PubMed Central (PMC))

また、2024年に公表されたホエイプロテインに関するRCTのメタ解析では、サルコペニア高齢者10試験、1,154人を対象とし、ホエイプロテインによって、

  • 四肢骨格筋量指数:SMD 0.47
  • 四肢骨格筋量:SMD 0.28
  • 歩行速度:SMD 1.13

の改善が報告された。また、ホエイプロテインとレジスタンス運動を組み合わせた場合、握力はSMD 0.67(95%CI 0.29~1.04)改善した。(サイエンスダイレクト)

ただし、これらの研究結果をもって「ホエイプロテインを飲めばサルコペニアが治る」と解釈することはできない。研究ごとに対象者、摂取量、運動内容、介入期間が異なり、効果の大きさにもばらつきがあるためである。


7.1回にどのくらいたんぱく質を摂ればよいのか

総摂取量だけでなく、1回当たりの摂取量も重要な論点である。

PROT-AGE Study Groupでは、高齢者において筋たんぱく質合成を刺激するための1食当たりの目安として、

25~30 g程度のたんぱく質

かつ、

ロイシン約2.5~2.8 g

を含む食事が一つの目安として提示されている。(サイエンスダイレクト)

これは「毎食必ず30 g必要」という確定的な基準ではない。食事全体の摂取量、身体活動、体格、疾患などによって変わるためである。

しかし、高齢者では朝食のたんぱく質が少なく、夕食に偏るケースがある。そのため、

朝・昼・夕の各食で適量のたんぱく質を確保する

という考え方は合理的である。


8.プロテインは「食事の代わり」ではなく「不足分の補助」

高齢者にプロテインを勧める場合、最も重要なのは「何を飲むか」ではなく、なぜ必要なのかを明確にすることである。

例えば、食欲低下によって朝食をほとんど食べられない人、独居で調理が難しい人、肉や魚を食べる量が減った人、疾患後の回復期に必要量を確保できない人などでは、プロテイン飲料は実用的な選択肢になり得る。

一方で、通常の食事から十分なたんぱく質を摂取している人が、さらに大量のプロテインを追加すれば、その分だけ筋肉が増えるというエビデンスはない。

2025年に発表されたメタ解析の概観でも、健康な高齢者ではプロテイン補給による筋量への効果は「ない、またはごく小さい」とする中程度の確実性のエビデンスが示されている一方、慢性疾患を持つ高齢者では一定の筋量増加が示唆されている。(PubMed Central (PMC))

したがって、プロテインの必要性は、

「高齢者だから必要」ではなく、「食事だけで必要量を確保できているか」で判断する

のが妥当である。


9.高齢者では「たんぱく質+運動+エネルギー」が基本

たんぱく質だけを増やしても、総エネルギー摂取量が不足していれば、たんぱく質がエネルギー源として利用される可能性がある。

ESPENは高齢者のエネルギー摂取について、一般的な目安として約30 kcal/kg体重/日を示し、個々の栄養状態、身体活動量、疾患、忍容性などに応じて調整することを推奨している。(ESPen 2022)

したがって、サルコペニア予防では、

①十分なエネルギー

②十分なたんぱく質

③レジスタンス運動・身体活動

という三つをセットで考える必要がある。

プロテインだけを追加しても、日常生活でほとんど身体を動かさなければ、期待される効果は限定される。


10.腎機能が低下している高齢者は注意が必要

高齢者へのプロテイン利用で特に注意すべきなのが腎機能である。

健康な高齢者に対する1.0~1.2 g/kg/日の摂取推奨と、腎疾患患者へのたんぱく質管理は同じではない。特に慢性腎臓病(CKD)がある場合、病期、eGFR、蛋白尿、糖尿病などを考慮して個別に栄養管理を行う必要がある。

そのため、CKDなどの腎疾患を指摘されている人が、自己判断でプロテインを大量摂取することは推奨できない。

また、肝疾患、心不全、糖尿病、急性疾患、低栄養、がん治療中などの場合も、単純に「高齢者だから1.5 g/kgまで増やす」という考え方ではなく、医師・管理栄養士などによる個別評価が必要である。


11.日本の2025年版「食事摂取基準」と高齢者

日本では2025年度から2029年度まで「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が使用されている。(厚生労働省)

同基準では、65歳以上のたんぱく質について、エネルギー産生栄養素バランスの目標量を15~20%エネルギーとしている。さらに、高齢者のフレイル予防を考える場合には、単純に目標量の範囲内に入っているかだけでなく、必要エネルギー量が少ない人でもたんぱく質不足を避けることが重要とされている。(厚生労働省)

2025年版の策定資料では、0.8 g/kg体重/日未満のたんぱく質摂取が筋のサイズ、質、機能の低下と関連した報告があること、またESPENが健康な高齢者に1.0~1.2 g/kg体重/日を推奨していることが示されている。さらに、フレイル・サルコペニア予防を考える場合には、推奨量より多い摂取が望ましい可能性にも言及している。(WIC-Net)

ここからも、日本において高齢者のたんぱく質不足を避けることが重要な栄養政策上の課題となっていることが分かる。


12.高齢者にプロテインを勧めるべき人・必要性が低い人

実践面では、次のように整理すると分かりやすい。

プロテインが有用になりやすい人

  • 食欲が低下している
  • 食事量そのものが少ない
  • 肉・魚・卵・乳製品・大豆製品の摂取が少ない
  • 体重減少がみられる
  • 低栄養・フレイル・サルコペニアのリスクがある
  • 運動習慣があり、食事だけで必要なたんぱく質を確保しにくい
  • 病気や入院後などで栄養需要が増えている

必ずしもプロテインが必要ではない人

  • 3食を問題なく食べている
  • 肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などを十分摂取している
  • 体重・筋力・身体機能が安定している
  • 食事から1.0~1.2 g/kg/日前後のたんぱく質を無理なく確保できている

つまり、プロテインは「高齢者全員に必要なサプリメント」ではない。


13.学術的に見た結論

高齢者とプロテインの関連性を現在のエビデンスから整理すると、次のようになる。

  • 加齢では筋量・筋力・身体機能が低下し、サルコペニアのリスクが高くなる。
  • 高齢者では若年成人よりも多めのたんぱく質摂取が推奨され、健康な高齢者では概ね1.0~1.2 g/kg体重/日が国際的な一つの目安である。
  • 疾患、低栄養、フレイルなどがある場合は、1.2~1.5 g/kg体重/日程度が提案されることがある。
  • ただし、これらは一律の処方量ではなく、疾患・腎機能・栄養状態などに応じて個別化する必要がある。
  • プロテイン補給単独による筋量・筋力改善効果は限定的で、研究結果も一貫していない。
  • レジスタンス運動とたんぱく質補給を組み合わせた場合、筋量・筋力に対する有益性がより明確になる。
  • 1日の総たんぱく質量だけでなく、各食に適量を配分することも重要と考えられている。
  • プロテインはあくまで食品であり、食事から必要量を確保できる人に大量摂取を勧める根拠は乏しい。
  • CKDなどの腎疾患がある場合には、自己判断での高たんぱく質化を避け、医療専門職による個別管理が必要である。

したがって、学術的に最も妥当な表現をするならば、**「高齢者にはプロテインが必要」ではなく、「高齢者では筋量・筋力・身体機能の維持を目的として十分なたんぱく質摂取が重要であり、食事だけで必要量を確保できない場合にプロテインは有用な補助手段となる」**となる。

さらに重要なのは、プロテイン単独ではなく、適切なエネルギー摂取、十分なたんぱく質、レジスタンス運動を組み合わせることである。サルコペニア対策という観点では、この三者を一体として設計することが、現在のエビデンスに最も整合的なアプローチといえる。

救命士
救命士
最終的には、メシ食って、運動して、水飲んで、グッスリ寝ろ!になりますね。

主要参考文献・出典

  1. Bauer J, et al. Evidence-Based Recommendations for Optimal Dietary Protein Intake in Older People: A Position Paper From the PROT-AGE Study Group. Journal of the American Medical Directors Association. 2013;14(8):542-559. (PubMed)
  2. Volkert D, et al. ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clinical Nutrition. 2022;41:958-989. (Clinical Nutrition Journal)
  3. Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis (EWGSOP2). Age and Ageing. 2019;48(1):16-31. (OUP Academic)
  4. Wang X-M, et al. Effect of Protein Supplementation Combined With Resistance Training on Muscle Mass, Strength and Function in the Elderly: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Nutrition, Health & Aging. 2019. 21 RCTs、1,249人。(PubMed)
  5. Whaikid P, Piaseu N. The effectiveness of protein supplementation combined with resistance exercise programs among community-dwelling older adults with sarcopenia: a systematic review and meta-analysis. Epidemiology and Health. 2024;46:e2024030。7 RCTs+1準実験研究、854人。(PubMed Central (PMC))
  6. Li M-L, et al. Improving sarcopenia in older adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials of whey protein supplementation with or without resistance training. Journal of Nutrition, Health & Aging. 2024;28(4):100184。10 RCTs、1,154人。(サイエンスダイレクト)
  7. Finger D, et al. Effectiveness of Protein Supplementation Combined With Resistance Training on Muscle Strength and Physical Performance in Elderly. 2020. 16研究、657人。(PubMed Central (PMC))
  8. Tieland M, et al. The impact of dietary protein or amino acid supplementation on muscle mass and strength in elderly people: Individual participant data and meta-analysis of RCTs. (PubMed Central (PMC))
  9. 日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版」。(日本アニメーション映画祭)
  10. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」。2025年度~2029年度使用。(厚生労働省)

注記: 本稿の数値は研究・ガイドライン上の集団レベルの目安であり、個人への栄養処方を意味しない。特に慢性腎臓病、肝疾患、心不全、糖尿病、低栄養、急性疾患などがある場合は、疾患ごとの栄養管理を優先する必要がある。

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