119 救急車 元救急隊長が教える 高齢になるとなぜ筋肉が落ちていくのか?

寝たきりになるのはゴメンだ 元救急隊長が伝授

筋肉を減らさないための対策・解決策

  • 毎日30分程度のウォーキングや軽い筋力トレーニングを行う(回数を分けても良い)
  • 椅子からの立ち座りやスクワットなど、脚の筋肉を意識して鍛える
  • 毎食、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品などから十分なたんぱく質を摂る
  • ビタミンDやカルシウムを意識して摂取し、骨や筋肉の健康を保つ
  • 長時間座りっぱなしを避け、こまめに体を動かす
  • 十分な睡眠をとり、筋肉の修復を促す
  • 糖尿病・高血圧症などの生活習慣病を適切に治療・管理する
  • 「年だから仕方ない」と諦めず、無理のない運動を継続する

年齢を重ねると、「昔より歩くのが遅くなった」「階段の上り下りがつらい」「少し重い荷物を持っただけで疲れる」と感じる人が増えてきます。その大きな原因の一つが、筋肉が少しずつ減っていくことです。医学的には「加齢性筋肉減少(サルコペニア)」と呼ばれていますが、決して特別な病気ではなく、多くの人に起こる老化現象の一つです。

しかし、筋肉が減るのは「年を取ったから」という一言では説明できません。体の中ではいくつもの変化が同時に起こり、それらが積み重なって筋肉が減少していくのです。

ビルド&スクラップのバランス崩壊

まず知っておきたいのは、筋肉は一度作られたら一生そのまま残るものではないということです。筋肉は毎日、古くなった細胞が壊され、新しい細胞が作られています。これは家の修繕工事によく似ています。古くなった柱を取り替え、新しい柱に交換することで家は丈夫さを保っています。

若いころは、新しく作られる筋肉の量が壊れる量を上回っています。しかし高齢になると、新しい筋肉を作る力が少しずつ弱くなり、壊れる量のほうが多くなります。そのため、筋肉は年齢とともに少しずつ細くなっていくのです。

次に大きな原因が運動不足です。筋肉は「使われることで維持される臓器」です。毎日歩いたり、階段を上ったり、荷物を持ったりすることで、「この筋肉は必要だ」と体が判断し、筋肉を維持しようとします。

しかし高齢になると、仕事を引退したり、外出の機会が減ったり、膝や腰の痛みから歩く距離が短くなったりします。すると筋肉は「もうそれほど必要ない」と判断され、少しずつ減らされてしまいます。

実際には、病気などで一週間ほど寝たきりになるだけでも脚の筋肉はかなり衰えることが知られています。回復して歩けるようになっても、以前の筋力に戻すには何週間、場合によっては何か月もかかることがあります。

タンパク質の重要性(バランスの良い食事)

食事も大きな原因です。筋肉は主にたんぱく質から作られています。肉、魚、卵、大豆製品、牛乳などが筋肉の材料になります。別記事で詳しく説明していますので、下のボタンからご一読ください。

🌿 高齢者の筋肉量維持に欠かせない栄養とは?

ところが高齢になると、食欲が低下したり、歯が悪くなったり、飲み込む力が弱くなったりして、十分なたんぱく質を摂れない人が少なくありません。

家を建てるために木材や鉄が必要なように、筋肉を作るにも材料が必要です。材料が不足すれば、体は筋肉を十分に作ることができません。

さらに年齢を重ねると、体内のホルモンも変化します。ホルモンとは、体のさまざまな働きを調整する「司令官」のような存在です。

若いころには筋肉を作る働きを助けるホルモンが豊富に分泌されています。しかし加齢とともにその量が減少するため、筋肉を増やす力も弱くなります。その結果、若いころと同じ運動をしても筋肉が付きにくくなるのです。

また、筋肉を動かす神経も年齢とともに衰えてきます。

神経回路の衰退

脳から送られる「動け」という命令は神経を通って筋肉に届きます。しかし神経細胞は加齢によって少しずつ減少し、命令が十分に伝わらなくなります。すると筋肉は以前ほど働かなくなり、使われない部分から徐々に細くなっていきます。

これは電球が壊れたのではなく、電気を送る配線が古くなり、十分な電気が流れなくなる状態に似ています。

さらに最近の研究では、高齢者の体内では弱い炎症が長期間続いていることが分かっています。これは風邪のような激しい炎症ではありませんが、この小さな炎症が筋肉を壊しやすくすると考えられています。

糖尿病や慢性腎臓病、心臓病などの生活習慣病がある人では、この影響がさらに大きくなり、筋肉の減少が早まることもあります。

筋肉が減ると、歩く速度が遅くなるだけではありません。転倒しやすくなり、骨折の危険性も高まります。一度骨折すると長期間動けなくなり、その間にさらに筋肉が減少します。この悪循環が寝たきりにつながる大きな原因の一つとなっています。

明るい兆し

しかし、筋肉には他の臓器にはない大きな特徴があります。それは「何歳になっても鍛えればある程度は増える」ということです。

80歳や90歳から筋力トレーニングを始めても、筋力が向上したという研究は数多く報告されています。もちろん20歳のころのような筋肉量には戻りませんが、歩く速度が速くなったり、転びにくくなったり、立ち上がりが楽になったりと、日常生活は大きく改善します。

最大の敵は・・・

そのため大切なのは、「もう年だから」と諦めないことです。毎日少し歩く、階段を使う、椅子から立ち座りを繰り返す、十分なたんぱく質を摂る。このような小さな積み重ねが、5年後、10年後の体を大きく変えていきます。

高齢者の筋肉が減る理由は、加齢だけではありません。運動不足、栄養不足、ホルモンの変化、神経の衰え、生活習慣病など、さまざまな要因が重なって起こります。しかしその一方で、適切な運動とバランスの良い食事を続ければ、筋肉の減少を遅らせ、健康寿命を延ばすことは十分可能です。

筋肉は「使えば応えてくれる臓器」です。今日から少し体を動かすことが、将来も自分の足で歩き続けるための最も確実な投資になるのです。

救命士
救命士
筋肉は裏切らない、関節は一瞬で裏切る。

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