要点(チェックリスト)
☑ 法定相続情報一覧図の写しは、法務局が相続関係を公的に証明する書類です。
☑ 銀行などでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本や相続人全員の戸籍謄本の代わりとして利用できます。
☑ 複数の金融機関で相続手続きを行う場合でも、戸籍謄本一式を何度も提出する必要がなくなり、手続きが大幅に簡素化されます。
☑ 法務局へ提出した戸籍などは原本還付を受けることができ、他の銀行や不動産登記などの手続きにも利用できます。
☑ 遺言書がある場合は、自筆証書遺言の検認済証明書または公正証書遺言が必要となります。
☑ 法定相続情報一覧図の写しだけで相続手続きが完了するわけではなく、銀行所定の相続届や印鑑証明書などは別途必要になります。
1 法定相続情報一覧図の写しとは
相続が開始すると、預貯金の解約や不動産の名義変更など、さまざまな相続手続きを行わなければなりません。その際、金融機関では、誰が法定相続人であるかを確認するため、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本の提出を求められるのが一般的です。
しかし、被相続人が転籍を繰り返している場合には、複数の市区町村から戸籍を取り寄せる必要があり、戸籍が何十枚にも及ぶことも少なくありません。このような戸籍一式を銀行ごとに提出することは、相続人にとって大きな負担になります。
この負担を軽減するために設けられた制度が「法定相続情報証明制度」です。相続人が被相続人の出生から死亡までの戸籍一式などを法務局へ提出すると、法務局が内容を確認し、相続関係を一覧にまとめた「法定相続情報一覧図」を認証します。その写しとして交付されるのが「法定相続情報一覧図の写し」であり、公的に相続関係を証明する書類として広く利用されています。
2 銀行で利用できる書類
法定相続情報一覧図の写しを提出すると、多くの銀行では次の書類の代わりとして利用できます。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍)謄本
相続人全員の現在の戸籍謄本
そのため、銀行ごとに戸籍謄本の束を提出する必要がなくなり、相続人の負担は大きく軽減されます。
具体例
父親が亡くなり、A銀行、B銀行、C信用金庫に預金があったとします。
法定相続情報一覧図の写しを取得していない場合には、それぞれの金融機関に対して戸籍一式を提出しなければなりません。一方、この写しを取得していれば、それぞれの金融機関には法定相続情報一覧図の写しを提出することで相続人の確認ができるため、戸籍一式を何度も提出する手間を省くことができます。複数の金融機関を利用していた被相続人ほど、この制度のメリットは大きいといえます。
3 原本還付制度
法務局へ提出した戸籍謄本や除籍謄本などは、原本還付の手続きを行うことで返却を受けることができます。
返却された戸籍は、銀行だけではなく、不動産の相続登記や証券会社での名義変更、生命保険金の請求、相続税申告など、他の相続手続きでも利用できます。
具体例
相続人が銀行で預金を解約した後、不動産の相続登記も予定している場合には、新たに戸籍を取り直す必要はありません。法務局から返却された戸籍をそのまま司法書士へ提出することができるため、取得費用や時間の節約につながります。
4 遺言書がある場合
相続では、遺言書の有無によって必要となる書類が異なります。
(1)自筆証書遺言の検認済証明書
被相続人が自筆証書遺言を残していた場合、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していない限り、原則として家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
検認後には検認済証明書が付され、この書類を銀行へ提出することで、遺言に基づく相続手続きを進めることができます。
具体例
母親が「預金は長女に相続させる」と自筆で遺言を書いていた場合、そのまま銀行で預金を引き出すことはできません。まず家庭裁判所で検認を受け、検認済証明書を添付して銀行へ提出することで、遺言の内容に基づいた手続きを行うことができます。
(2)公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人が法律に基づいて作成する遺言であり、家庭裁判所での検認は不要です。
そのため、相続開始後は公正証書遺言の正本または謄本を銀行へ提出するだけで、比較的円滑に相続手続きを進めることができます。
具体例
父親が「自宅は長男、預金は長女に相続させる」という公正証書遺言を作成していた場合、銀行はその内容を確認したうえで預金の払戻し手続きを行います。そのため、家庭裁判所で検認を受ける必要はありません。
5 注意点
法定相続情報一覧図の写しは非常に便利な制度ですが、これだけで銀行の相続手続きが完了するわけではありません。
銀行では通常、次の書類も必要になります。
銀行所定の相続届
相続人全員または代表相続人の印鑑証明書
本人確認書類
遺産分割協議書(遺言書がない場合など)
実印
具体例
兄弟3人が相続人となり、長男が預金を相続することを話し合いで決めた場合には、法定相続情報一覧図の写しに加え、兄弟全員が署名・実印を押した遺産分割協議書と印鑑証明書を提出しなければなりません。銀行はこれらの書類によって相続人全員の意思を確認したうえで、預金の払戻しを行います。
6 まとめ
法定相続情報一覧図の写しは、法務局が相続関係を公的に証明する書類であり、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本や相続人全員の戸籍謄本に代わる書類として、多くの銀行で利用されています。これにより、複数の金融機関で相続手続きを行う際の負担が大幅に軽減され、戸籍一式を何度も提出する必要がなくなります。また、提出した戸籍は原本還付を受けることができるため、不動産登記や相続税申告など他の手続きにも利用できます。
一方で、銀行所定の相続届や印鑑証明書、遺産分割協議書などは別途必要になるため、事前に各金融機関へ必要書類を確認し、漏れのないよう準備を進めることが大切です。法定相続情報一覧図の写しを活用することで、相続手続きをより円滑かつ効率的に進めることができます。

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