親の財産を守りたい!どうしよう?!

法律系

成年後見制度があります。

認知症、知的障害、精神障害などによって「物事を判断する能力」が不十分になった方を、法的に保護して支える仕組みを「成年後見制度」と呼びます。(これを事理弁識能力と言います。)

専門用語が多くて難しく感じられますが、要するに「本人の判断能力のレベルに合わせて、サポートする人にどれだけの権限を持たせるか」の3段階のグラデーションになっています。

この記事では、これら3つの違いや「実質的な知的年齢(精神年齢)の目安」、法律上の注意点、そして監視役となる「監督人」の仕組みを含めた正式な手続きの流れを分かりやすく解説します。

ちなみにウチの母親も施設入所中ですが、10年ほど前にこの制度を使用して「被保佐人」になりました。保佐人は私ですが、監督者としては旧知の弁護士に依頼して認められています。


1. 3つの違いと「実質的な知的年齢・状態」の目安

成年後見制度では、本人の状態に合わせて3つの区分に分かれます。実際の精神鑑定や実務において、本人の判断能力をわかりやすく例えた場合の知的年齢(精神年齢)の目安や法律上の権限は以下の通りです。

呼称(サポートを受ける人)本人の状態と【実質的な知的年齢の目安】サポートする人サポートする人の権限(何ができる?)
① 成年被後見人常に判断能力が欠けている状態
【目安:幼児(概ね3〜5歳未満)程度
日常の買い物も一人では困難で、常に誰かの見守りや介護を必要とするレベル。
成年後見人強力な代理権・取消権
・代わりに全ての契約をする
・本人が勝手にした契約を取り消す
※ただし、日用品の購入は取り消せない
② 被保佐人判断能力が著しく不十分な状態
【目安:小学校低学年(概ね5〜9歳未満)程度
日常の買い物(食料品など)はできるが、不動産売買や借金、遺産分割といった重要な手続きは一人で判断できないレベル。
保佐人同意権・取消権
・重要な契約に同意する
・本人が勝手にやった重要な契約を取り消す
③ 被補助人判断能力が不十分な状態
【目安:小学校高学年〜中学生(概ね9〜15歳未満)程度
大体のことは一人でこなせるが、悪質な詐欺に騙されやすかったり、複雑な契約の書類を一人で理解して進めるには不安や誤解が生じるレベル。
補助人一部の同意権・代理権
・家庭裁判所が決めた「特定の契約」だけをサポートする

※高齢者の認知症が原因で申し立てる場合、病院で行う「長谷川式簡易知能評価スケール(30点満点)」の点数も大きな目安になります。成年被後見人の場合は10点以下(重度)、被補助人の場合は16点〜22点(軽度)を推移することが多いです。

💡 【重要】成年被後見人でも「日用品の買い物」は取り消せない

成年被後見人が行った法律行為(契約)は原則としてすべて取り消せますが、「日常生活に関する行為(日用品の購入など)」については取消権が及びません(民法第9条但書)。

例えば、本人がスーパーで買ってきたお惣菜や日用品、トイレットペーパーなどは、たとえ不要なものであっても後見人が勝手に返品・解約することはできません。これは、本人が人間として最低限の自立した日常生活を送る権利を守るための重要なルールです。日常生活に関する行為は比較的金銭消費も少ないためです。


2. 実際の手続きの「5つのステップ」と「監督人」の選任

「家族の判断能力が落ちてきたから、成年後見制度を使いたい」と思ったとき、実際にどのような手続きを踏むのか。窓口は、市役所ではなく「家庭裁判所(本人が住んでいる地域を管轄するところ)」になります。

【ステップ1】病院で「鑑定書・診断書」を書いてもらう

まずは主治医に、成年後見制度を使いたい旨を伝え、「成年後見用」の特別な診断書を書いてもらいます。お医者さんがこの診断書に、先ほどの「後見」「保佐」「補助」のどのレベルに該当するか(精神・知能の判定)を記載します。

【ステップ2】必要書類の準備

本人の戸籍謄本や住民票、財産がわかるもの(預貯金通帳のコピー、不動産の登記簿謄本など)、収支がわかるもの(年金額の通知書など)を揃えます。

【ステップ3】家庭裁判所へ「申し立て」

書類が揃ったら、家庭裁判所に申し立て(申請)を行います。申し立てができる人は法律で決まっており、本人、配偶者、4親等内の親族(子供、孫、兄弟、甥・姪など)です。この際、「自分が後見人になりたい」と候補者(親族など)を立てることができます。

【ステップ4】裁判所による調査・面接と「監督人」の検討

家庭裁判所の職員が、申し立てた人や後見人候補者への面接を行い、本人の状態や親族間の関係性を調査します。

ここで裁判所は、後見人の不正を防ぐための「後見監督人(保佐監督人・補助監督人)」を選任すべきかを厳しくチェックします。

【ステップ5】「審判(決定)」と「登記」

裁判所がすべての状況を総合的に判断し、「後見の開始」と「後見人の決定」の審判を下します。

⚠️ 【重要】家族が後見人になると「監督人(監視役)」がつきやすい

裁判所の判断により、子供などの親族が後見人に選ばれるケースもありますが、その場合は高確率で弁護士や司法書士などの専門家が「後見監督人」としてセットで選任されます。

後見監督人がついた場合、家族であっても全ての財産管理を監督人にチェックされ、許可なくお金を動かせなくなります。また、財産額や親族間の状況によっては、最初から弁護士などの専門家が後見人に選ばれることもあります。


3. かかる費用はどれくらい?

手続きから、始まってからの費用まで、大きく分けて2つのタイミングでお金がかかります。

① 手続き(申し立て)のときにかかる費用

  • 裁判所への手数料・切手代: 約5,000円〜1万円
  • お医者さんの診断書・鑑定費用: 約1万〜5万円(裁判所が「鑑定」を必須とした場合は高くなります)本当にお高い・・・
  • 書類集めの実費: 数千円
  • ※もし書類集めを司法書士や弁護士に丸投げ(代行)する場合は、さらに約10万〜20万円の報酬が必要です。

② 始まってから「ずっと」かかる費用(後見人・監督人への報酬)

専門家が「後見人」になった場合、または家族が後見人になって専門家が「後見監督人」についた場合、本人の財産から毎月自動的に報酬が引かれます。

  • 基本報酬: 月額 約2万円〜6万円(本人の財産の多さに比例して高くなります)
  • ※この費用は、本人が亡くなるまで一生涯、毎月ずっとかかり続けます。

4. 知っておくべきメリットとデメリット

実際に利用する上でのリアルな注意点です。

⭕ メリット

  • 高額な詐欺から守れる: 勝手に結ばされた高額なリフォームや、不要な投資契約などを後からすべて白紙(取り消し)にできます。
  • 財産管理がスムーズになる: 銀行で親の口座が凍結されても、後見人であれば堂々と親の口座から施設費用などを引き出すことができます。
  • 遺産分割協議ができる: 認知症の親がいて進まなかった実家の相続話し合いも、後見人が代わりに立ち会うことで進められます。

❌ デメリット

  • 途中で辞められない: 本人の認知症が奇跡的に治るか、亡くなるまでずっと続きます。
  • 財産を自由に動かせなくなる: たとえ家族であっても、「親のお金で孫のお祝いを買う」「親の資産で投資や相続税対策をする」といったことは、監督人や裁判所が認めないため一切できなくなります。

5. まとめ

成年後見制度は、本人の判断能力(実質的な知的年齢の目安)に応じて「被後見人(重度)」「被保佐人(中等度)」「被補助人(軽度)」の3つに分かれます。

悪質な高額契約からは守られますが、本人の自立のため「日用品の買い物」は取り消せないこと、また家族が後見人になっても専門の「監督人」による厳しいチェックが入るため、身内だけで財産を自由に管理できるわけではないという点に強い注意が必要です。

一度始まると本人が亡くなるまで続く非常に重い制度であるため、まだ本人が元気なうちに自由に財産管理を託せる「家族信託」や「任意後見制度」といった別の選択肢も含めて、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。

後々を考えると弁護士さんの方が万能ですが、司法書士さんと比較するとどうしても費用は高くなるがちです。

それと、この制度はあくまでも相手がマトモというか実態のある相手だから通用するってことは覚えておいてください。例えば、オレオレ詐欺みたいな実態のない相手には無力です。



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