救急隊が最初に聞くことには理由がある ~命を救う「情報」の力~
119番通報をして救急隊が到着すると、処置を始めながら矢継ぎ早に質問されます。
「お名前を教えてください。」
「何歳ですか?」
「持病はありますか?」
「普段飲んでいる薬はありますか?」
「かかりつけの病院はどちらですか?」
苦しくてつらい時に、なぜこんなに質問されるのだろうと思ったことはありませんか。
「早く病院へ連れて行ってほしい。」
そう感じる方もいるでしょう。
しかし、救急隊にとってこれらの情報は、血圧や脈拍と同じくらい重要なものなのです。
我々はこの質問の反応も実は見ています。回答内容、回答に要する時間など大変重要な要素が満載なんです。
たった一言が判断につながる
現場では、何気ない一言が命を救うことがあります。
「心臓の手術をしたことがあります。」
「血液をサラサラにする薬を飲んでいます。」
「人工透析をしています。」
このような情報が分かった瞬間に、救急隊が考える搬送病院の選択肢が一気に増えます。
場合によっては極端に狭くもなります。
例えば、転んで頭をぶつけただけに見えても、血液を固まりにくくする薬を飲んでいる人は、頭の中で出血が広がる危険があります。
お薬手帳は「命のメモ帳」
患者さん本人は意識がありません。
家族も飲んでいる薬が分かりません。
そんな時、お薬手帳を見れば、持病や治療内容がある程度推測できます。
心臓病なのか。
糖尿病なのか。
高血圧なのか。
抗がん剤治療中なのか。
今は、全国の消防本部もマイナンバーカード保険証に検証段階に入っていますので、
お薬手帳はあるに越したことはないですが・・・
家族しか知らない情報もある
救急現場では、本人が話せないことも珍しくありません。
その時に頼りになるのは家族です。
「いつもと様子が違います。」
「朝までは普通でした。」
「夕食は食べていません。」
「今日は薬を飲み忘れています。」
こうした情報は、搬送病院の選定に大きい影響を与えることもあります。
逆に、
「よく分かりません。」
だけでは、医師も救急隊も手探りになってしまいます。
普段から家族同士で、持病や飲んでいる薬について話しておくことは、とても大切です。
保険証より先に必要なもの
「保険証を探さなきゃ!」
そう慌てる方も多くいます。
もちろん保険証は大切です。
しかし、救急隊にとって最優先なのは患者さんの状態です。
保険証が見つからないから搬送できない、ということはありません。
まずは命を守ることが最優先です。
現在はマイナ保険証が相当普及しており、マイナンバーカードがあれば、処方薬情報も全て入手できまるようになってきています。とは言え、緊急の現場ってアナログ的なモノが大切なのも事実です。
ですから、「お薬手帳」はあった方が良いかも知れません。(固執する必要はありません。)
救急隊がうれしいと思う準備
現場で「助かるな」と感じるご家庭には共通点があります。
玄関近くにお薬手帳がある。
かかりつけ医の診察券がまとめてある。
緊急連絡先がすぐ分かる。
持病を書いたメモがある。
たったこれだけで、現場の動きは大きく変わります。
ただし、かかりつけ医の診察券を準備してもらっても必ずそこに搬送できるとは限らないのは
前の記事でもお話しました。
「まだ元気だから」は準備しない理由にならない
「うちはまだ大丈夫。」
そう思っている人ほど、いざという時に慌てます。
事故や病気は、準備ができた時ではなく、突然やってきます。
だからこそ、元気な今のうちに備えておくことが大切なのです。
一枚のメモ。
一冊のお薬手帳。
それだけで救える時間があります。
ただ、現場感覚から言えば、あると参考にはなると思います。
あなたの情報が、あなたを守る
救急隊は、現場で限られた時間の中から答えを探しています。
その時、一番頼りになるのは傷病者や家族からの情報です。
さきほども述べましたが、一刻を争う現場ほど、アナログ的なものが役立ちます。
具体的には「いつもと〇〇が違う」という家族の具体的な一言。
それが適切な病院選定に影響を与えることも決して珍しくありません。
救急車を呼ぶ機会がないことが一番ですが、もしもの日に備えて、今日からできる準備を始めてみてください。
それは自分自身だけでなく、大切な家族を守ることにもつながります。
次回予告
「救急車って、呼んだ順番で来るんですよね?」
実は違います。
救急車は、すべての119番通報を同じように扱っているわけではありません。
次回は、普段は知ることのできない119番通報の舞台裏と、通信指令室で実際に行われている緊急度の判断について、元救急隊長の視点から分かりやすくお話しします。
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