119 救急車 元救急隊長が教える救急現場のウラ その5

救急隊のホンネ

119番通報で慌てないために ~通信指令員は何を聞いているのか~

「119番してください!」

そう言われても、実際に119番通報をした経験がある人は、それほど多くありません。

突然の出来事に頭が真っ白になり、

「何を話せばいいんだろう。」

と焦ってしまうのは当然です。

しかし安心してください。

119番通報は、あなたが上手に話す必要はありません。

通信指令員が必要なことを順番に聞いてくれます。

皆さんは、その質問に落ち着いて答えるだけでいいのです。

最初に聞かれるのは「火事ですか、救急ですか」

電話がつながると、まず最初に聞かれるのが、

「火事ですか、救急ですか。」

という質問です。

これは全国どこの消防本部でもほぼ共通です。

ここで「救急です。」と伝えると、通信指令員はすぐに救急通報として対応を始めます。

そして次に確認するのが場所です。

一番大切なのは現場(の所在地)

「どんな病気ですか。」

より先に聞かれるのが住所というか現場所在地です。

住所は通報時にはまず聞きません。

なぜなら、通報者が必ずそこの住人という保証はないからです。

もう分かりましたね?

もし通報者に住所を尋ねると、通報者自身の住所を言うかも知れない・・・ましてやそれが近隣者となると、現場間違いという重大事案に発展します。

なお、現在はほぼ全国の消防本部には、gpsの強制発動機能があり、仮に現場が不明でもある程度まで絞り込めます。またその際の電子地図は市販の住宅地図を更に改良した相当詳細な地図です。

 その次にやっと、状況を尋ねます。

なぜ、状況を2の次にするのか?

理由は簡単です。

もし途中で電話が切れてしまっても、場所さえ分かっていれば救急隊を向かわせることができるからです。

逆に住所が分からなければ、傷病者がいても救急車は到着できません。

自宅なら住所(所在地)を。

外出先なら目印になる建物や交差点、コンビニ、駅などでも構いません。

普段から自宅の住所を家族全員が言えるようにしておくことをおすすめします。

とっさの場合、自分の住所も言えなくなるものです。目立つ所に住所のメモを貼るのも一案ですよ。

症状はできるだけ簡潔に

通信指令員は短時間で緊急性を判断します。

だからこそ、長い説明は必要ありません。

例えば、

「70歳の父が突然胸を押さえて倒れました。」

「5歳の子どもがけいれんしています。」

「転んで頭を強く打ち、意識がありません。」

このくらいで十分です。

その後、通信指令員が必要なことを一つずつ確認していきます。

分からないことは「分かりません」で大丈夫

通報していると、

「呼吸はしていますか。」

「意識はありますか。」

と聞かれることがあります。

分からなければ、

「分かりません。」

で構いません。

適当に答えてしまうほうが危険です。

通信指令員は確認方法も教えてくれます。

「肩を軽くたたいて呼びかけてください。」

「胸が上下しているか見てください。」

その指示に従えば十分です。

ちなみに現場に行く救急隊も通信指令員からの情報で何となく状況は掴んでいます。それこそ場数を踏んだ者のカンでしょうか・・・

電話は切らないで

住所や症状を伝えると、

「もう救急車は向かっています。」

と言われることがあります。

この時、「じゃあ切ります。」と電話を終えてしまう方がいます。

でも、できれば通信指令員が「切って大丈夫です」と言うまでは、そのまま電話をつないでください。

患者さんの容体が変われば、その情報はすぐ救急隊へ伝えられます。

また、心肺停止が疑われる場合には、その場で胸骨圧迫やAEDの使い方を指導することもあります。

この数分が命を左右することもあるのです。

ちなみに通報者が電話を切っても消防側ではホールドと言って、回線保留し続けていますので、何回でも呼び返し電話をかけられます。(警察も同じ)

通報中から救急隊は動き始めている

意外に知られていませんが、通信指令員があなたと話している間にも、救急隊は出場準備を始めています。

救急車の中では、

「〇〇町、80代男性、呼吸苦。」

「マンション5階、エレベーターあり。」

といった情報がリアルタイムで送られています。

つまり、通信指令員と救急隊は別々に動いているのではありません。

一つのチームとして、同時に活動しているのです。

救急隊が早く到着するためにできること

救急車が近くまで来たら、できる範囲で迎えに出てもらえると助かります。

マンションならエントランスで待つ。

夜間なら玄関の明かりをつける。

表札が見えにくい場合は外へ出る。

これだけでも到着時間が短くなることがあります。

もちろん、傷病者から離れられない場合は無理をする必要はありません。

その時は通信指令員へ伝えれば大丈夫です。

私の中で印象深かった現場

ある日の通報でした。

電話口の女性は泣きながら、

「主人が倒れました!」

それしか言えませんでした。

通信指令員は落ち着いた声で一つずつ質問を続けます。

住所。

呼吸。

意識。

そして胸骨圧迫の方法。

救急隊が到着した時には、家族が懸命に胸骨圧迫(旧 心臓マッサージ)を続けていました。

後日、その方は社会復帰されたと聞きました。

救ったのは救急隊だけではありません。

勇気を出して119番し、通信指令員の指示を信じて行動したご家族だったのです。

これを救命の連鎖と言います。現在、総務省消防庁主導で全国規模でバイスタンダーの育成に注力中です。

ちなみに心停止した場合、何もしなければ、約5分で脳は不可逆性変性といい、壊れていきます。仮に蘇生しても大変思い後遺症が残るとことが分かっています。

ところが、1分以内に胸骨圧迫を開始すると、1カ月後の社会復帰率は10%、更に救急隊到着前にバイスタンダーがAEDを使用した場合のそれは44.9%にもなります。(出典:普通救命講習テキスト)

次回予告

救急車が到着すると、赤色灯やサイレンに近所の人が集まり、少し気まずい思いをしたという話を耳にすることがあります。

「本当に救急車を呼んでよかったのだろうか。」

そんな気持ちになる人も少なくありません。

次回は、「なぜ病院が決まらない?」救急車の中で本当に起きていることをお話します。

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