九州方面(熊本県)で大地震があり、大きな人的・物的被害が出ています。今回は法律面からこの
大災害を見ていきたいと思います。
災害対策基本法・災害救助法・激甚災害指定の違い
大規模な地震や豪雨災害が発生すると、ニュースでは「災害対策本部を設置した」「災害救助法を適用した」「激甚災害に指定された」という言葉が使われます。しかし、これらは同じような支援制度ではありません。それぞれ目的が異なり、災害発生直後から復旧・生活再建まで、別々の役割を担っています。
簡単に整理すると、
- 災害対策基本法=災害対応全体を動かすための基本ルール
- 災害救助法=被災者の命と生活を守るための救助制度
- 激甚災害指定=被害が大きい災害の復旧費用を国が支援する制度
です。
災害時の行政対応は、この3つが組み合わさりながら進められます。
1.災害対策基本法は「災害対応の司令塔」
災害対策基本法は、災害対策に関する最も基本的な法律です。
この法律の役割は、災害が発生した際に、国、都道府県、市町村などがどのように対応するのかを定めることです。
例えば、
- 防災計画の作成
- 災害対策本部の設置
- 避難指示の発令
- 消防・警察・自衛隊など関係機関の連携
- 被害情報の収集
- 住民への情報提供
などは、災害対策基本法を根拠として行われます。
つまり、この法律は被災者へ直接食料や住宅を提供する法律ではありません。
災害が起きたときに、
「誰が指揮を執るのか」
「どの組織が何を担当するのか」
という行政の動きを決める、いわば災害対応の「基本設計図」です。
2.災害救助法は「被災者の命と生活を守る法律」
災害救助法は、災害によって生活が困難になった被災者を救助するための法律です。
一定規模以上の災害が発生した場合に適用され、都道府県などが中心となって救助を行います。
具体的には、
- 避難所の設置
- 食料や飲料水の提供
- 被服、寝具、生活必需品の給与
- 医療や助産
- 被災住宅の応急修理
- 応急仮設住宅の供与
などがあります。
ここで重要なのは、災害救助法は「被災者に補償金を配る法律」ではないということです。
災害直後の混乱した状況で、被災者の生命を守り、最低限の生活を維持することが目的です。
災害救助法を支える5原則
災害救助法による救助には、基本となる5つの考え方があります。
① 平等の原則
事情やお金があるかどうかを問わず、困っている人すべてに同じように救助を行います。
② 必要即応の原則
決まったやり方にとらわれず、その時その場所で本当に必要な助けをすばやく提供します。
③ 現物給付の原則
お金ではなく、食事や生活必需品などの「物やサービス」を直接わたすことを基本とします。
④ 現在地救助の原則
住んでいる場所に関係なく、今いるその場所で救助を行います(旅行者も対象です)。
⑤ 職権救助の原則
被災者からの頼み(申請)を待たず、国や自治体(都道府県知事)の判断ですぐに救助を始めます。 [1, 2]
3.応急仮設住宅はどの法律で支援されるのか
災害後、多くの人が不安に感じるのが「家を失った場合どうなるのか」という問題です。
応急仮設住宅の提供は、災害救助法に基づく救助です。
住宅が被害を受け、自分の力では住む場所を確保できない被災者に対して、
- 建設型応急仮設住宅
- 民間賃貸住宅を利用した「みなし仮設住宅」
などが提供されます。
「住宅を再建するまでの間、安全な生活場所を確保する」ための制度です。
また、住宅が完全に失われていなくても、住み続けることが困難な場合には、災害救助法による住宅の応急修理が行われます。
4.激甚災害指定は「復旧を進めるための財政支援」
激甚災害指定は、災害救助法とは目的が違います。
これは、被害が非常に大きな災害について、国が自治体の復旧費用を通常より手厚く支援する制度です。
対象となるものは、
- 道路
- 河川
- 学校
- 農地
- 林道
- 公共施設
などです。
大規模災害では、市町村だけで復旧費用を負担することは困難です。
そこで国が、
「この災害は自治体だけでは対応できない規模である」
と判断し、復旧費用を支援します。
つまり、
災害救助法
→ 今困っている被災者を助ける
激甚災害指定
→ 壊れた社会基盤を復旧するためのお金を支援する
という違いがあります。
5.生活再建には別の制度もある
災害後の住宅再建では、災害救助法だけではなく、被災者生活再建支援法も関係します。
災害救助法は、避難所や応急仮設住宅など「災害直後の救助」が中心です。
一方、被災者生活再建支援法は、住宅が大きな被害を受けた世帯に対して、生活再建を支援するための制度です。
つまり、
- 災害救助法
→ 災害直後を乗り切るための支援 - 被災者生活再建支援法
→ その後の生活を立て直すための支援
という役割分担になります。
まとめ
災害時に使われる制度は、名前が似ていても役割は明確に違います。
災害対策基本法は、国や自治体が災害に対応するためのルールです。
災害救助法は、被災者の命と生活を守るための制度であり、避難所、食料、医療、応急仮設住宅などを支えます。その根底には「平等・必要即応・現物給付・現在地救助・必要最小限」という5原則があります。
激甚災害指定は、道路や公共施設などの復旧を進めるため、国が財政面で支援する制度です。
災害対応とは、単に救援物資を届けることではありません。発災直後の命を守る段階、生活を維持する段階、そして地域や住宅を復旧する段階があります。
この3つの制度の違いを理解することで、災害時に行政が何をしているのか、そして自分たちがどのような支援を受けられる可能性があるのかを正しく理解することができます。
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