慌てず落ち着いて!
救急車を呼ぶという状況は、誰にとっても一生に数回あるかないかの大事件です。目の前で大切な人が倒れたり、自分が激しい痛みに襲われたりすれば、パニックになって当然です。
しかし、そのパニックの数分間が、大切な命を救うかどうかの分かれ道になります。
この記事では、いざという時に焦らず、「誰が見ても、何をすればいいか一目でわかる」救急車を要請する際のこころ構えと実践手順を分かりやすく解説します。命を守る取扱説明書として、ぜひ心に留めておいてください。
1. 最も大切な3つのこと
救急車を呼ぶ前に、まずはこの3つの要点(心構え)を覚えておきましょう。これだけで、焦る気持ちを半分に抑えることができます。
◆ ① 「119」を押した瞬間から、あなたは一人ではない
電話をかける前は孤独で不安ですが、119番のボタンを押して繋がった瞬間から、あなたはプロの指令員とチームになります。
電話の向こうの指令員は、あなたがパニックになっていることを百も承知のうえで、優しく、的確に質問してくれます。あなたが医学の知識を持っていなくても、彼らの質問に答えるだけで、必要な情報がすべて伝わる仕組みになっています。落ち着いて、声を聞きましょう。
◆ ② 「迷ったら呼ぶ」が正解
「これくらいで救急車を呼んだら迷惑かも……」「もし大したことなかったら恥ずかしい」と躊躇(ちゅうちょ)してしまう人はとても多いです。しかし、命に関わる事態(脳卒中や心筋梗塞など)は、1分1秒の遅れが致命傷になります。明らかに普段と違う激しい症状があるなら、遠慮せずに呼んでください。「間違えたっていい、命のためだ」と割り切る勇気が大切です。
我々救急隊も「なあんだ。」で終われば実は安心するんですよ。
◆ ③ 救急車は「タクシー」ではない
「迷ったら呼ぶ」とは言っても、明らかに緊急性のない軽い症状(「明日仕事だから早く診てもらいたい」「擦り傷ができた」「交通手段がない」など)で呼ぶのは厳禁です。本当に救急車が必要な重症患者のもとへ到着するのが遅れてしまいます。緊急性の判断がつかない場合は、後述する相談窓口を活用しましょう。ちなみに私が隊長の時は、そういう人には遠慮なく厳しく「指導」していました。いわゆる常習者には怖い隊長って顔が知れ渡っていました。
2. 119番通報で聞かれる「5つのこと」
電話がつながると、通信指令員から順番に質問されます。あらかじめ聞かれる内容を知っておけば、焦らずに済みます。
| 聞かれる順番 | 質問内容 | 答えるポイント |
| 1. 火事か救急か | 「火事ですか?救急ですか?」 | はっきりと**「救急です」**と答えます。 |
| 2. 場所(住所) | 「救急車が向かう住所はどこですか?」 | 市区町村名から言います。自宅なら住所、出先なら近くの大きな目印(コンビニ、交差点名など)を伝えます。 |
| 3. 誰がどうしたか | 「どなたが、どうされましたか?」 | 「〇歳の(男性/女性)が、〇〇(意識がない、胸を痛がっている等)」と伝えます。 |
| 4. 意識と呼吸 | 「意識はありますか?普段通り呼吸していますか?」 | 呼びかけに反応するか、胸が上下しているかを見て、ありのままを伝えます。 |
| 5. あなたの名前 | 「通報しているあなたのお名前と連絡先は?」 | あなたの名前と、今かけている携帯電話の番号を伝えます。 |
💡 住所が分からないときの裏ワザ
近くの大きい建物(学校、病院、警察署、消防署など)を言ってみてください。指令員は
電子巨大精密地図でものの数秒で要請場所をピンポイントで確定してしまいます。
3. 救急車が到着するまでに「あなたがやるべきこと」
電話を切った後、救急車が到着するまでの時間は平均で約10分です。この10分間にできる備えが4つあります。
◆ ① 応急手当をする(指示された場合)
もし指令員から「胸骨圧迫(心臓マッサージ)をしてください」「出血をハンカチで強く押さえてください」などの指示(口頭指導)があった場合は、その指示に全力を注いでください。あなたのその手が、命を繋ぎます。
◆ ② 必要なものを一箇所にまとめる
救急隊が到着した際、これらが揃っていると病院への受け入れ調整が劇的に早くなります。
- 健康保険証 / マイナンバーカード(必須)
- お薬手帳(飲んでいる薬の情報は、医師にとって命綱です)
- 現金・スマートフォン(付き添い人の帰りの交通費や連絡用)
- 靴(本人のもの、付き添い人のもの)
- ※乳幼児は「母子手帳」、高齢者は「診察券」など
◆ ③ 救急車の「案内役」を出す
もし近くに協力者がもう一人いる場合は、「交差点やマンションの入り口まで救急車を迎えに行ってもらう」ように頼んでください。救急隊が家を迷う時間を無くすため、これが非常に助かります。夜間であれば、懐中電灯を振るのも効果的です。
◆ ④ 部屋を片付け、ペットをケージに入れる
ストレッチャー(担架)が通れるように、玄関や廊下の荷物を少し脇に寄せます。また、ペットが興奮して救急隊員に吠えたり噛みついたりしないよう、別の部屋かケージに隔離してください。
4. 判断に迷ったときの「最強の味方」
「救急車を呼ぶべきか、自分で病院に行くべきか……」と迷ったときのために、スマホに登録しておくべき2つのダイヤルがあります。
◆ 電話「#7119」(救急安心センター事業)
ここに電話すると、医師や看護師などの専門家が24時間体制で相談に乗ってくれます。「今すぐ救急車を!」か「明日受診で大丈夫」かを、プロの目で判断してくれます。(※一部、実施していない自治体もあります)私見ですが、ほとんどの場合は救急要請してきますが・・
◆ 電話「#8000」(子ども医療電話相談)
小さなお子さんがいる家庭は必須です。夜間に子どもが突然熱を出した、吐いた、頭をぶつけたという時に、小児科の看護師や医師に繋がります。
🔗 ネットで調べるなら:全国版救急受診アプリ「Q助」
厚生労働省が提供しているWebツールです。画面の質問に答えるだけで、今すぐ救急車が必要かどうかの緊急度を自動で判定してくれます。
まとめ:最高のこころ構えは「日頃の準備」
救急車を呼ぶ状況になったとき、その場でこの長い文章を思い出すのは不可能です。だからこそ、最高のこころ構えとは「何もない平時に準備しておくこと」に尽きます。
- 健康保険証とお薬手帳の場所を家族で共有しておく
- スマホの連絡先に「#7119」と「#8000」を登録しておく
- 自宅の住所を、高齢の家族や子どもでも言えるように壁に貼っておく
これだけの準備をしておけば、いざという時、あなたの心には「よし、あの通りにやろう」という軸ができます。
あなたの落ち着いた行動と、その場の119番通報が、大切な人の未来を救う最初の一歩になります。ぜひ、今日からできる準備を一つでも始めてみてください。
あとどうでも良いハナシ・・・119番通報する時に時々「184」発信する人がいますがムダです。消防側で強制発番できますし、消防側がホールド(電話回線を保持したままでいる機能)を解除しない限りは、何回でも消防から電話がかかってきます。それと場所も実はある方法で相当細かく特定できます。そこら辺は警察と同じ仕組みを持っていますよ。


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